2025.11.02

「ちゃん付け」セクハラ判決が示す職場の距離感──“親しみ”と“支配”の境界線をどう引くか

【出典】Yahoo!ニュース(長崎放送/2025年10月31日配信)
「ちゃん付け」セクハラ判決、何が問題だったのか? 結構好き…女性の本音から見える《NGライン》は


東京地裁が「ちゃん付け」発言をセクハラ認定、22万円の支払い命令

職場で女性を「〇〇ちゃん」と呼んだ元同僚男性に対し、東京地裁は10月23日、セクシュアルハラスメントにあたると認定し、22万円の慰謝料支払いを命じました。
判決は「業務上の必要性はなく、不快感を与えるもの」として、「許容される限度を超えた違法なハラスメント」と指摘しました。
容姿への「体形良いよね」といった発言も併せて問題視されています。


女性の本音:「ちゃん付け」自体は嫌ではない

20~40代の女性への取材では、「ちゃん付け」そのものに対して好意的な意見も少なくありませんでした。
「優しい人だと感じる」「距離が縮まって嬉しい」といった声が上がる一方で、「一律にNGとされるのは違和感がある」との指摘も。
多くの女性が、「ちゃん付け」が問題になるのは他の不快な言動とセットになった時だと答えています。


「体形良いね」は全員一致で「絶対なし」

一方、容姿や体形への言及については「気持ち悪い」「性的搾取のよう」と全員が拒否反応を示しました。
特に「体のラインが出ていいね」といった発言は、相手の身体を評価の対象にする行為として強い嫌悪感を呼びます。
発言の意図よりも、受け手の尊厳を損なうかどうかが基準となることを、今回の判決は改めて示しました。


“親しみ”と“支配”の間にある曖昧なライン

女性たちの声から見えてくるのは、言葉そのものよりも関係性と状況が重要だという点です。
「新人時代からの呼称なら気にならないが、接点の少ない年上男性から突然呼ばれると違和感がある」という意見もありました。
「ちゃん付け」が問題の本質ではなく、相手への敬意や対等性が欠けていたかどうかが焦点なのです。


雇用クリーンプランナー(KCP)の視点──「距離を詰める力」と「境界を守る力」を育てる

ハラスメントは「悪意」よりも「無自覚」から生まれます。
KCPは、コミュニケーションを安全にするために次の三点を提言します。

① 呼称・言葉づかいの基準を共有する

職場での呼称ルール(敬称・ニックネームなど)を明確にし、誰もが安心して使える言葉を選ぶ習慣をつくる。

② 受け手の尊厳を軸にする研修

「意図」ではなく「受け手の感じ方」を基準にした対話型ハラスメント研修を実施する。

③ 日常の会話に“安全装置”を設ける

雑談や評価の場でも、「それ言って大丈夫?」と確認し合える文化的リテラシーを育てる。


結語:「優しさ」と「越境」の違いを見極める社会へ

親しみを込めたつもりの言葉が、相手にとっては境界を侵す行為になることがあります。
職場のコミュニケーションは、「近づくこと」よりも「尊重し合うこと」で深まる。
KCPは、安心して働ける距離の設計と、無自覚な越境を防ぐ教育の両立を支援していきます。

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