2025.11.04
宝塚歌劇団の「海ゆかば」中止に見るキャンセルカルチャー──批判と迎合のはざまで問われる表現の自由
【出典】産経新聞(2025年11月2日配信)
宝塚歌劇を直撃したキャンセルカルチャー ソロ歌唱「海ゆかば」 SNSでの批判に迎合
宝塚歌劇団が「海ゆかば」歌唱を中止 SNS批判に迎合との声も
宝塚歌劇団は9月、本拠地・宝塚大劇場で上演中の宙組公演において、トップスターによる「海ゆかば」ソロ歌唱を取りやめると発表しました。
歌劇団は「さまざまなご意見を頂いている」と説明しましたが、SNS上では「戦意高揚の曲ではない」「表現の自由を萎縮させる」といった意見も噴出。
批判への過敏な反応として、キャンセルカルチャーへの迎合が指摘されています。
「海ゆかば」は軍歌ではなく鎮魂歌──議論の分断が浮き彫りに
「海ゆかば」は昭和12年、作曲家・信時潔による作品で、歌詞は万葉集の大伴家持の長歌から引用されたもの。
戦時中に用いられた経緯がある一方で、戦後は戦没者の鎮魂歌としても広く受け継がれてきました。
批判側は「戦争を連想させる」と主張する一方、擁護側からは「『ベルサイユのばら』も禁止か」との皮肉も。
表現をめぐる価値観の分断が際立ちました。
広がる“キャンセル文化” 自治体や企業にも波及
人気ロックバンドの曲が「軍歌的」として不買運動に発展した例や、千葉県市川市が写真展示を撤去→再掲示するなど、批判と迎合の連鎖は各所で起きています。
SNSの影響で、少数の声が組織の判断を左右する傾向が強まり、「SNSで声を上げた方が届く時代」とも言われています。
雇用クリーンプランナー(KCP)の視点──「批判社会」ではなく「熟議社会」へ
キャンセルカルチャーは、言葉や表現を即時的に「断罪」する文化です。
KCPは、健全な議論と自由な表現を両立させるために、次の三点を提言します。
① 表現の背景を共有する説明責任
組織や表現者が、意図や文脈を丁寧に説明することで誤解を防ぎ、対話の起点を作る。
② SNS対応を“感情”ではなく“根拠”で行う
批判への反応を焦らず、自らの非と正当性を明確に整理した上で対応する。
③ 表現者と社会の「間」に立つファシリテーターを育成
メディア・教育・自治体が連携し、感情のぶつかりを対話に変える文化を育む。
結語:キャンセルではなく、対話によって変わる社会へ
「海ゆかば」をめぐる議論は、何を排除し、何を残すかという社会の鏡です。
批判の自由と、受け止める側の責任の両立こそが成熟した表現社会の条件。
KCPは、炎上ではなく熟議で前に進む「対話型社会」への転換を支援していきます。
