2025.10.28
静岡・長泉町が「カスハラ防止条例」可決──罰則なき理念条例で“言いやすい社会”へ
【出典】TBS NEWS DIG(2025年10月27日配信)
「あなたの行為、アウトですよと言いやすくなるように」 長泉町で“カスハラ防止条例”が可決 県内市町で初=静岡
長泉町が「カスタマーハラスメント防止条例」を可決、県内初の制定
静岡県長泉町は27日、住民や利用客による理不尽な要求や暴言から職員や事業者を守る「カスタマーハラスメント防止条例」を可決しました。
静岡県内の市町村では初の制定で、施行は2026年4月1日。
町議会では全会一致で賛成され、町長は「安心して働ける環境づくりを進める第一歩」と述べました。
背景:町職員への暴言や長時間対応が常態化
町が2025年度に実施した調査によると、住民福祉課や教育委員会など16部門でカスハラ被害が確認されました。
中には「税金で食ってるくせに」「今日は残業だな」といった暴言や、2時間以上に及ぶ過剰な対応を強いられるケースもあったといいます。
こうした現場の疲弊を受け、条例では職員のみならず町内の全ての事業者を対象に、啓発と行動変容を促す枠組みを設けました。
理念条例としての狙い:「アウトですよ」と言える勇気を
長泉町の池田修町長は、「あなたの行為、アウトですよと言いやすくなるように」と説明。
条例は罰則を設けない理念条例として、カスハラを“絶対に許さない文化”を育てる狙いです。
町長は「行き過ぎた行為は現行法で対応できる。まずは社会全体の意識を変える段階にしたい」と語りました。
罰則よりも、日常のコミュニケーションを正す「倫理的抑止力」を重視しています。
全国に広がるカスハラ対策の動き
「カスハラ防止条例」は東京都や北海道などで2025年から施行が始まりましたが、全国的にはまだ少数です。
自治体によっては加害者の氏名を公表する仕組みも導入されていますが、長泉町では対立ではなく共生を重んじる立場を明確にしています。静岡県全体でも同様の条例が可決され、2026年4月から施行予定です。
雇用クリーンプランナー(KCP)の視点──「罰する」より「守る」を中心に据える
カスハラ防止の本質は、罰ではなく「守る仕組み」の共有にあります。
KCPは、理念条例を形骸化させないために次の三つの実践を提言します。
① 現場主導のガイドライン策定
行政・民間を問わず、現場の実情に合わせた対応マニュアルを作成し、柔軟に運用します。
② 「言える文化」を育む研修
「それはアウト」と伝える勇気を支える対話トレーニングを制度化し、心理的安全性を高めます。
③ 被害と加害を分けない啓発
住民も職員も「関係を再構築する主体」として捉え、相互理解を促す広報・教育活動を継続します。
「言いやすさ」が職場と社会を守る
暴言や過剰要求を恐れず「それは違う」と言える社会へ。
長泉町の条例は、働く人々が声を上げやすい環境づくりに一石を投じました。
KCPは今後も、罰則ではなく「信頼と対話」で人と組織を守るカスハラ対策の普及を支援していきます。
