協会サポーターのご紹介

2024.10.31

心の健康を守るために
これからの時代に必要な
個人の意識と企業の取り組み

三田 浩一 氏

おおかみクリニック梅田院院長

経歴 鳥取大学医学部卒業後、平成3年5月に医師免許を取得し、大阪公立大学医学部附属病院の第2内科(代謝内分泌病態内科学)に入局。内科および精神科の臨床経験を積み、心療内科院長を経て、令和6年8月からおおかみクリニックの梅田院院長に就任。

専門医とは異なる経験を生かし、心の健康を支えたい

まず精神科医になったきっかけを教えてください。

内科医からスタートしましたが、精神科医とは異なる視点で、患者さんの心の健康を支える手助けができればと考えたことがきっかけです。内科医として活動していた頃から、精神面で悩む患者さんへのサポートが十分に行き届いていない現状に課題を感じていました。特に、職場でのパワハラや長時間労働といった社会的なストレスが原因で不調を訴える方が増えている一方で、労働環境の問題に対応する医師が少ないと感じています。

誰もが抱える現代社会のストレスによる心の健康被害

来院される患者さんには、どういった方が多いですか。

来院される方は若年層が多く、大手企業や金融機関、保険会社の方、また医療従事者など多岐にわたります。他にも公務員、教師、中には労働局に勤める方もおり、職場環境でのストレスに悩まれている方が多い状況です。社会的な立場に関わらず、誰もが心の健康を害するリスクがあると実感しています。

職場環境に悩む方の傾向について教えてください。

来院される方には、過剰な要求や精神的な攻撃にさらされている方が多くいらっしゃいます。例えば、サポートが不十分なまま現場に配置され、人材不足の中で無理な目標を求められるような状況です。また、契約内容と実際の労働時間が異なり、後から過重労働が明らかになるケースも目立ちます。

このような要因により精神的な負担が蓄積され、心身の不調につながっているのです。同じ企業で働く方が似たような理由で来院されることがあり、職場環境の改善が企業全体として必要だと感じることもあります。

患者さんはどのような経緯で来院されますか。

職場の産業医、ご家族、友人の勧めで来院されることが多いですが、ほとんどの方が精神的な不調を我慢し、限界に達してからようやく受診に踏み切る状況です。できるだけ早めに相談していただくことで、治療や支援もスムーズに進みます。心の不調を感じたときや周りの方に相談するタイミングで、ぜひ病院にも足を運んでほしいと思います。

ハラスメントや労働トラブルの実践的な知識を学ぶために目指した資格取得

雇用クリーンプランナー資格を取得した理由を教えてください。

資格取得を通じて、ハラスメントや労働トラブルについての知識を深め、患者さんの支援に役立てたいと考えたからです。ハラスメント関連の資格は多くありますが、労働トラブルの分野まで踏み込んだものはあまりありません。

雇用クリーンプランナーの資格は、労働トラブルの事例や具体的な対策について網羅的に学習できるため、実践的な学びを得られます。私自身、今回の学習を通して社会保険労務士のような業務を担う必要性を感じ、非常に有意義でした。

ハラスメントの知識を深めることが、心の健康や企業の健全な成長を守る

精神科医の立場からハラスメント対策には何が必要だと考えますか。

個人としては、パワハラに関する理解を深めることが重要です。どのような行為がパワハラに該当するのかを正しく理解することで、自分の行動を見直すきっかけとなり、被害を予防する助けにもなります。就職活動や転職活動では、企業の文化や雰囲気を事前にリサーチすることも大切です。

また、患者さんの中には休職に伴う傷病手当金の申請について職場から案内がなかったり、休職期間終了後に申請するよう指示されたりする方がいます。社会保障制度の知識を持っておくことも、サポートを正しく受けるうえで非常に有用です。

組織としては、経営者が主体的にハラスメント防止策を推進することが欠かせません。「昔からこうだから」といった理由で問題を放置せず、現代の価値観に即した対応が必要です。労働トラブルの報道をきっかけに復職プログラムを整備した企業もありますが、依然としてハラスメントが根強く残る企業もあり、現状は二極化していると感じます。

ハラスメント対策を組織的に進め、社内に浸透させることで、従業員が健やかに働ける環境が整い、企業の健全な成長にもつながると考えます。

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