2025.12.26
熊本市職員セクハラ・パワハラ懲戒免職をどう読むか──「関係性」ではなくルールで線を引く公務員ハラスメント対応|一般社団法人クレア人財育英協会
【出典】部下女性に抱きつかせ、同僚男性の肩殴る 熊本市職員を懲戒免職 ハラスメント行為認定
熊本市が48歳主査を懲戒免職──セクハラとパワハラを同時認定
熊本市は2025年12月25日、スポーツ振興課の詫間孝明主査(48)を懲戒免職処分としたと公表しました。理由は、部下の20代女性に対するセクシュアルハラスメントと、同僚の20代男性に対するパワーハラスメントです。
報道によると、主査は部下女性に抱きつこうとしたり、腕を引っ張って自分に抱きつかせたりするなどの行為を行い、「関係性ができていると思った」と釈明したとされています。さらに、同僚男性の肩を殴り、「死んでこい、おまえ」といった暴言を吐くなど、複数のハラスメント行為も認定されました。
具体的なハラスメント行為と刑事手続──「ホテルの部屋を見せたい」と誘って抱きつこうとする
熊本市によると、セクハラ行為が起きたのは2024年11月頃。主査は、部下の20代女性を「ホテルの部屋を見せたい」と誘い、部屋で抱きつこうとしたとされています。今年3月、この女性が別の職員に相談したことから事案が発覚しました。
その後、熊本県警は2025年10月、詫間主査を不同意わいせつ容疑で逮捕。熊本地検は処分保留で釈放したうえで、任意で捜査を続けていると伝えられています。行政としての懲戒と、刑事手続きが並行して進んでいる構図です。
同僚男性に対しても、肩を殴る身体的な暴力と「死んでこい、おまえ」という言葉での攻撃があり、パワハラとして認定されました。これらが重なった結果、熊本市は最も重い懲戒である懲戒免職を選択しています。
「関係性ができていると思った」は言い訳にならない──同意と優位性の問題
今回のケースで、主査側の釈明として報じられたのが「関係性ができていると思った」という言葉です。しかし、職場におけるセクハラ判断においては、「加害者本人がどう思っていたか」よりも、「相手がどう感じたか」と「立場の優位性」が重視されます。
上司と部下、公務員組織の中での評価権限、年齢差や雇用上の影響力を考えれば、20代女性部下が40代後半の主査に対して明確に「NO」と言いづらい構造があることは明らかです。「ホテルの部屋を見せたい」という誘い方も、業務とは無関係であり、職場の権限構造を背景にした性的な言動として判断されても仕方がありません。
「関係性ができている」「相手も嫌がっていないと思った」という常套句は、セクハラ事案でしばしば見られますが、公務員として、そして管理職としては通用しない論理だということを改めて示した事案と言えるでしょう。
組織としての責任──上司2人も訓告処分に
熊本市は、詫間主査本人の懲戒免職と併せて、当時の上司2人についても「監督責任があった」として訓告処分としました。部下からの相談を受けた後の対応や、日頃の職場の雰囲気づくりなど、管理職としての役割を十分果たせなかったと判断された形です。
ハラスメントは個人の問題であると同時に、「見て見ぬふりをした組織」の問題でもあります。相談を受けたときにどう動いたか、噂レベルで認識していた時に何か手を打てたか──こうした点が問われたとも言えます。
雇用クリーンプランナー(KCP)の視点──公務員ハラスメント対応を「属人的対応」から「ルールと仕組み」へ
今回の熊本市職員のセクハラ・パワハラ懲戒免職事案は、地方自治体や公務員組織全体にとって、多くの教訓を含んでいます。雇用クリーンプランナー(KCP)の視点から、特に押さえておきたいポイントは次の3つです。
第一に、「関係性」ではなく「ルール」で線を引くことです。「仲が良い」「冗談のつもり」「関係ができていると思った」といった主観ではなく、職場として明確に「同意のない身体接触は禁止」「部下を私的な場所に誘うことは原則NG」などの基準を示し、研修で繰り返し伝える必要があります。
第二に、ハラスメント相談のルートと初動対応を整備することです。今回のケースでは、部下女性が別の職員に相談したことが発覚のきっかけでした。相談を受けた側が迷わずに上げられるよう、所属長、人事、コンプライアンス、外部窓口など、複数の選択肢とフローを用意し、「聞いた以上は組織として動く」ことを徹底することが、公務員組織の信頼を守ります。
第三に、パワハラとセクハラを「個別事案」で終わらせず、「指導とハラスメントの境界」を組織全体で学び直すことです。スポーツ振興課という性質上、「厳しい指導」「フランクな関係」が正当化されやすい土壌もあったのかもしれません。これを機に、暴言・暴力・からかい・飲み会・私的な誘いなど、どこからがハラスメントなのかを、具体的なシーンとともに共有する必要があります。
結語:「公務員だからこそ」求められるハラスメントゼロの職場づくり
公務員は、住民の税金で運営される組織の一員であり、同時に一人の労働者でもあります。だからこそ、職場のハラスメントは「当事者同士のトラブル」では済まされず、自治体全体への信頼に直結します。
熊本市の今回の決定は、セクハラ・パワハラに対して厳しく向き合う姿勢を示した一方で、「関係性ができていると思った」といった言い訳を許さないというメッセージでもあります。雇用クリーンプランナー(KCP)は、自治体や公務員組織が、この事案をきっかけにハラスメント防止規程・相談体制・研修・評価の仕組みを見直し、「公務員だからこそ安心して働ける職場」をつくっていくことを支援していきます。
