2026.01.10
静岡大学アカハラ・パワハラ停職処分──「反省」で終わらせず、研究教育現場のガバナンスを整える|一般社団法人クレア人財育英協会
【出典】人格を傷つけるような暴言に過度の叱責 複数年にわたるパワハラやアカハラで停職処分 静岡大学の准教授 いずれの行為も認め反省の弁
静岡大学の准教授が停職3カ月──複数年のパワハラ・アカハラを認定
静岡大学は2026年1月8日付で、40代の准教授を停職3カ月の懲戒処分にしたと発表しました。教職員や学生に対して、複数年にわたってパワーハラスメント(パワハラ)およびアカデミックハラスメント(アカハラ)に該当する行為が確認されたためです。
大学によれば、当該准教授は一方的かつ独断的な言動で教育研究活動を侵害したほか、名誉や人格を傷つけるような暴言、過度の叱責などの不適切な行為を繰り返していたとされています。ハラスメントは2023年に複数の通報が寄せられたことで発覚し、調査の結果、学内の定義に照らしてパワハラ・アカハラと認定されました。
「人格を傷つける暴言」「過度の叱責」──研究教育活動への侵害が焦点
今回の事案では、単に言葉が荒かったというだけでなく、教育研究活動そのものへの侵害が指摘されています。アカハラは、研究指導の名のもとに、学習・研究の機会や評価、指導関係を通じて相手の尊厳を損なったり、活動を妨げたりする点に特徴があります。
大学という場は、成果や序列が強く意識されやすく、教員と学生、教員同士の関係にも権限差が生じます。その中で「独断的」「一方的」な指導やコミュニケーションが続けば、周囲は異議を唱えにくくなり、被害が長期化することがあります。今回「複数年にわたる行為」が認定されたことは、個人の問題に見えて、実は組織文化やガバナンスの問題が背景にあることを示しています。
准教授は行為を認め「反省」──しかし問われるのは再発防止の仕組み
静岡大学によると、准教授はいずれの行為も認めた上で反省の弁を述べています。本人が認めたことは事実関係の確定を進めるうえで重要ですが、ハラスメント対策は「反省した」で終わりません。大学としては、同様の構造を再発させないための制度と運用が問われます。
日詰一幸学長は、「今後こうしたことが再び起こることのないよう全教職員に求めるとともに、学長として使命と責任の重さを自覚し、再発防止と信頼回復に向けて組織全体として努力を続ける」とコメントしています。ここで鍵になるのは、再発防止がスローガンに留まらず、日々の研究教育現場に落ちるかどうかです。
雇用クリーンプランナー(KCP)の視点──大学のハラスメント対策は「相談が出た後」より「出る前の設計」が重要
大学のハラスメントは、企業の職場ハラスメントと共通する点がある一方で、固有の難しさがあります。指導・評価・研究費・学位・推薦状など、教員側が握る資源が多く、「声を上げると不利益になるのでは」という不安が起きやすいからです。雇用クリーンプランナー(KCP)の視点では、今回の事案から次の三点が重要だと考えます。
第一に、研究指導や教育指導の「やり方」を個人任せにしないことです。研究室の中はブラックボックスになりやすく、指導者のコミュニケーションがそのまま文化になります。研究室運営の基本ルール、叱責や評価に関するガイド、相談ルートを制度として整え、学生が「ここまではセーフ、ここからはアウト」を理解できる状態を作る必要があります。
第二に、通報・相談後の初動と調査の透明性です。今回、2023年の複数通報が発覚の契機になりました。裏を返せば、通報が出るまで表面化しにくい環境があったとも言えます。相談を受けた側が迷わずに動けるフロー、被害者保護、調査の進め方、結果のフィードバックの仕組みを整え、「出しても無駄」という学習を生まないことが重要です。
第三に、「停職」という処分だけで終わらせず、指導能力の再教育と再発防止をセットで設計することです。大学教員は専門家である一方、対人支援や組織マネジメントの訓練を受けないまま指導者になります。叱責を指導と誤解しないための研修、ピアレビュー、外部のメンタリングなど、指導者としての学び直しの仕組みが不可欠です。
結語:大学の信頼回復は「個人の処分」ではなく「研究教育の透明性」で決まる
静岡大学の今回の処分は、アカハラ・パワハラを見過ごさないというメッセージとして重要です。ただし、信頼回復は懲戒処分だけでは実現しません。研究教育の現場が「声を上げても安全」「指導がブラックボックス化しない」状態になって初めて、学生も教職員も安心して学び働けます。
雇用クリーンプランナー(KCP)は、大学がハラスメントを個人問題に矮小化せず、研究室運営・相談体制・指導者育成を含むガバナンスとして整備し直す取り組みを支援していきます。
