2026.01.11
“セクハラ辞職”も「退職金6000万円」。首長ハラスメントが続く理由をどう断ち切るか──外部通報と権力監視で「握りつぶし」を防ぐ設計へ|一般社団法人クレア人財育英協会
【出典】“セクハラ辞職”も『退職金6000万円』前福井県知事だけじゃない…首長のハラスメントなぜ相次ぐ? 「内部通報は”握りつぶされる”危険」など知事経験者らが語る
前福井県知事のセクハラ認定と退職金支給、そして「首長ハラスメント」連鎖
前福井県知事のセクハラ問題をめぐり、調査報告書で「セクハラを裏付けるメッセージ」が少なくとも4人に送られていたことや、身体的接触を含む行為が確認されたと報じられています。問題の発覚後、前知事は辞職しながらも、退職金が支給されたことが注目を集めています。
さらに記事は、前福井県知事だけでなく、近年、複数の自治体で首長によるセクハラ事案が相次いでいる点を取り上げています。ここで問われているのは「一人の首長の資質」ではなく、首長という権力の位置にハラスメントが集まりやすい構造と、それを止められない組織の設計です。
「内部通報は握りつぶされる危険」──トップが加害者のとき、内部は機能しにくい
報告書では、被害者が上司に相談しても半信半疑で受け止められ、「また同じようなメッセージが来たら言ってほしい」といった助言にとどまったとされています。また、相談窓口が設置されていたにもかかわらず、被害者がその存在を知らなかった点も指摘され、内部通報体制の実効性に大きな疑問が残ります。
元鳥取県知事の片山善博氏は「首長本人が加害者の場合、内部窓口では訴えが握りつぶされ、被害者が不利になる危険がある」と指摘します。元大阪府知事・元大阪市長の松井一郎氏も「外部通報をいかに簡単にできる仕組みにするかが重要」と述べ、内部だけで完結する仕組みの限界を強調しています。
つまり、首長ハラスメントの最大の論点は「悪い人を排除する」よりも、「悪い行為が起きたときに止められる仕組み」を持てるかどうかです。トップに注意できない職場では、ハラスメントは増殖します。
なぜ首長ハラスメントが増えるのか──権限集中と「特別扱い」が増長を生む
ハラスメント対策専門家は、「首長だからセクハラをするのではなく、セクハラ気質のある人が首長になってしまった」ことが一因だと指摘します。周囲に持ち上げられ、「自分は特別」「これくらい許される」といった誤った認識が強化され、境界線が崩れていくという分析です。
片山氏は知事経験者として、「首長は権限が集中し、部下から注意されにくい立場」だと述べます。さらに「1期目は進言があっても、2期目以降は減っていく」という回想は、権力の長期化が組織に遠慮と萎縮を生む現実を示しています。ハラスメントは個人の欲望だけでなく、「止める人が消える構造」の中で起きるということです。
「罰則強化」だけでは足りない──現場の“言える空気”と外部性の設計
記事では、海外の高額賠償などに触れつつ、罰則強化が抑止力になる可能性にも言及しています。しかし、現実の組織では「処罰の強さ」だけでは機能しません。被害者が声を上げられない、上司が握りつぶす、周囲が沈黙する──この三つが揃えば、どれだけ制度を強くしても動きません。
だからこそ、会議室をガラス張りにする、1対1の状況をつくらないといった環境設計、相談窓口の常設、定期的な実態調査、首長・職員への研修義務化など、「行為の芽」を早く発見し、止めるための装置を複数組み合わせる必要があります。
雇用クリーンプランナー(KCP)の視点──首長ハラスメントを減らす3つの制度設計
首長ハラスメントの問題は、自治体に限らず、強い権限を持つトップがいる組織すべてに共通します。雇用クリーンプランナー(KCP)の視点から、実装すべきポイントは次の3点です。
第一に、外部通報を「使える」状態にすることです。窓口が存在しても知られていなければ機能しません。外部窓口の周知を徹底し、匿名で相談でき、握りつぶされない運用を制度として担保する必要があります。トップが加害者の場合にこそ、外部性が必要です。
第二に、首長を含む権限者への規律を明文化することです。ハラスメント研修を「任意」ではなく義務にするだけでなく、首長が守るべき行動規範、会食・面談・メッセージのルール、違反時の手続きなどを規程化し、例外なく適用することが重要です。
第三に、「言える空気」を組織としてつくることです。松井氏が指摘したように、知事や市長に対して「それは駄目です」と言える文化がなければ、制度は動きません。定期的な実態調査や幹部への評価連動、外部監査の導入など、沈黙を破る仕組みを日常に埋め込む必要があります。
結語:首長の資質問題に還元せず、「止められる仕組み」を自治体に実装する
首長のハラスメントが相次ぐたびに「人選が悪かった」で終わらせてしまえば、同じことが繰り返されます。問題は、権力が集中する職場で、被害者が声を上げにくく、周囲が止めにくい構造が残っていることです。
必要なのは、外部通報、規律の明文化、言える空気という三つの設計で、「握りつぶし」を起こさせないことです。一般社団法人クレア人財育英協会は、自治体や組織がトップの問題を個人の倫理に委ねず、制度と運用で止める仕組みを整えられるよう支援していきます。
