2025.09.11

「野良犬」発言が争点――パワハラ自殺で1.5億円の調停合意と社長辞任。企業が直ちにすべきハラスメント対策【雇用クリーンプランナー解説】

何が問題だったのか――「指導」と「パワハラ」の線引き

出典:毎日新聞「『野良犬』とパワハラで社員自殺 化粧品会社が遺族に1.5億円支払い」(2025/9/11)


1. ニュースの要点(簡潔まとめ)

化粧品小売り「D-UP(ディー・アップ)」の女性社員(当時25歳)が自殺に至った事案で、東京地裁の民事調停は、社長によるパワーハラスメントが原因と認定。会社側は約1億5000万円の調停金を支払い、社長が辞任・謝罪することが決まりました。女性は新卒入社後、長時間の叱責や「野良犬」「力のない犬ほどほえる」などの人格否定発言を受け、うつ病を発症。労基署は2024年5月にパワハラ起因の労災と認定していました。


2. 何が問題だったのか――「指導」と「パワハラ」の線引き

厚生労働省の指針では、人格を否定する言動長時間にわたる一方的な叱責は「精神的な攻撃」に該当する典型例です。今回の事案は、経営トップ自身が行為者であった点が重大。権力関係が非対称な環境では、被害者は声を上げづらく、初動対応の遅れが深刻化を招きます。

また、うつ病の発症→休職→自殺という経過は、組織側のリスク管理(メンタル不調時の安全配慮義務、復職・療養支援、配置配慮)が十分でなかった可能性を強く示唆します。経営層の言動管理ライン・産業保健・人事・法務の連携こそが要です。


3. 企業に跳ね返るコスト――金銭だけでは終わらない

今回の調停金は約1.5億円。しかし、外部コスト(採用・育成のやり直し、レピュテーション低下、取引・採用の選好度低下、株主・金融機関からのESG評価悪化)に加え、内部コスト(離職増、心理的安全性の低下による生産性毀損、内部通報の沈黙化)が連鎖します。「ハラスメント対策=コスト削減・価値創造の投資」という視点転換が不可欠です。


4. 雇用クリーンプランナーが提案:初動〜90日でやるべき実務

【0〜7日:緊急対応】
・経営トップ名でゼロトレランス方針を再宣言。
社外窓口(第三者)を即時開設し、匿名通報の導線を明示。
・管理職の暴言・叱責スタイルを一時凍結(公開叱責禁止、1on1は同席も可)。
・当該部署に安全配慮(配置・業務量)を臨時適用。

【8〜30日:調査と制度の見直し】
・外部弁護士等による独立調査(事実認定・再発防止勧告)。
就業規則・服務規程にパワハラ禁止・懲戒を明文化。
指導のガイドライン(公開叱責禁止、時間上限、言葉づかい基準、記録様式)。
・相談窓口を複線化(人事・法務・産業保健・第三者)し、報復禁止を徹底。

【31〜60日:人と組織のケア】
・被害・周辺者へのメンタルケア(産業医・公認心理師・EAP)。
・経営層・管理職にハラスメント&人権研修(ケーススタディ/ロールプレイ)。
360度評価やピープルサーベイで「威圧・人格否定」傾向を可視化。

【61〜90日:定着と測定】
・KPI設計:相談率・一次対応時間・是正までのリードタイム・再発率・離職率
・四半期ごとに監査・トップレビュー
・成果と課題を社内に透明にフィードバック


5. 現場で使える「叱責3原則」とNGフレーズ

叱責3原則:①事実に限定(人格は論じない)、②非公開・短時間、③改善提案とセット(記録を残す)

NGフレーズ例:「無能」「価値がない」「社会人失格」「(動物等に例える人格否定)」――これらは精神的攻撃に該当し得ます。
代わりに、事実・影響・期待行動の順でフィードバックを。


6. 万一被害を感じたら(従業員の方向け)

記録:日時・場所・発言・対応・体調を時系列でメモ。可能ならメール・チャット・録音など証跡を保全。
相談:社内窓口(人事・法務・労組・産業医)に加え、外部厚労省「あかるい職場応援団」、各地の総合労働相談コーナー、弁護士会の法律相談等)へ。
受診:心身に不調を感じたら、早期に医療機関へ。診断書は安全配慮・労災申請の基礎資料になります。


7. 本件から学べること――トップこそ学び直しを

本件はトップの言動が組織全体の行動規範と安全文化を決めることを改めて示しました。
経営者と役員には、ハラスメント防止を「人権」「企業価値」「法令順守」「心理的安全性」の観点で統合的に捉えるリーダーシップが求められます。


雇用クリーンプランナーより:貴社の対策を“運用できる仕組み”へ

規程整備・窓口設置・研修・調査手順・メンタルケア・測定KPIまで、実務で回る一式を短期で整えるのが私たちの役割です。
ハラスメント対策労務トラブルの未然防止は、採用力・生産性・ESG評価の土台になります。まずはトップ宣言と運用設計から着手しましょう。

資格・学習の詳細:「雇用クリーンプランナー」公式サイト


FAQ(よくある質問)

Q. 厳しい指導とパワハラの違いは?
A. 業務上必要で相当な範囲の注意・指導は許容されますが、人格を貶める言動公開の場での長時間叱責業務と無関係な私的詮索などはパワハラの典型です。記録に「事実・影響・改善策」を残す運用が線引きの助けになります。
Q. 経営層が行為者のとき、どこに相談すれば?
A. 社内窓口に加え、第三者ホットライン(社外弁護士/EAP等)、総合労働相談コーナー、弁護士会などの外部窓口を活用しましょう。報復防止の仕組み(不利益取扱い禁止)が重要です。
Q. 再発防止の具体策は?
A. ゼロトレランス方針、規程改定、指導ガイドライン、複線相談窓口、独立調査、管理職の評価項目に人権・ハラスメント防止を埋め込む、メンタルケアとKPIモニタリング――をセットで回すことです。

※免責:本記事は公開報道をもとにした一般的な解説であり、個別の法的助言を目的とするものではありません。具体的な案件については、弁護士や各自治体・労働局等の相談窓口にご相談ください。

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