2025.12.26
オイシックス髙島宏平社長のセクハラ・パワハラ報道──「カリスマ経営」と「ハラスメント」の境界線|一般社団法人クレア人財育英協会
【出典】「頭悪すぎ」「ハゲ」オイシックス髙島宏平社長(52)のセクハラ・パワハラを告発!《「本人は反省し…」と回答》(文春オンライン)
急成長オイシックスのトップにセクハラ・パワハラ疑惑
食品宅配サービス大手のオイシックス・ラ・大地は、東証プライム上場企業として売上高2560億円(上場から12期連続増収)、営業利益69億円(前年比34%増)という快進撃を続けています。プロ野球球団の運営など多角化も進め、「成長企業」「イノベーティブな会社」としてのイメージが強い企業です。
その一方で、代表取締役社長の髙島宏平氏(52)に関するセクハラ・パワハラ疑惑が報じられました。複数の社員の証言として、社員に対し「頭悪すぎる」「バカなんじゃない?」などと強い言葉で詰め寄る言動、飲み会の場で女性社員に「エッチのときはメガネをかけるのか」と尋ねるセクハラ発言、髪の薄い取締役に「ハゲ」とからかう発言などがあったとされています。
記事によれば、髙島氏は「頭もキレるし、人の心を掴むのがうまいカリスマ経営者」として評価される一方、その熱量や言葉の強さが、社内ではパワハラやセクハラと捉えられている側面もあるようです。
会社側はハラスメント発言を「事実」と認め、厳重注意と再発防止を表明
文春オンラインの質問に対し、オイシックス側は、髙島氏によるパワハラ・セクハラに当たり得る発言について「事実」と認め、次のような趣旨の回答をしています。
・パワハラやセクハラのような発言があったことを受け、人事担当取締役から本人に対して厳重注意を行った。
・髙島氏自身も問題点を認識しており、反省し、改善に向けた努力を続けている。
・取締役に対して「ハゲ」と発言した件については、その取締役が自ら薄毛をネタにしていたことや創業時からの近い関係性に甘えた発言だったが、不快な思いをさせた本人や周囲に対して深くお詫びする。
企業として、発言の存在を否定するのではなく「不適切だった」と認め、謝罪と再発防止への姿勢を示した点は重要です。ただし、これでコンプライアンス上の課題がすべて解消されるわけではなく、「経営トップ自身のハラスメントリスクをどうマネジメントするか」という、より難しい論点が残ります。
カリスマ創業社長の「熱さ」とハラスメントの紙一重
記事では、髙島氏について、「社員面談で相手の心の内を言い当てるように語る」「東日本大震災のとき、全社員を前に『We Are the World』を流しながら熱いスピーチをし、号泣する社員もいた」といったエピソードも紹介されています。社員の心を動かすスピーチ力や、社会課題へのコミットメントなど、「カリスマ的リーダーシップ」がポジティブな形で作用してきた局面も少なくないと見られます。
一方で、同じ「熱さ」や「勢い」が、場面によっては「激詰め」「人格否定」「性的なからかい」として部下や同僚を傷つけてしまうこともあります。優れた頭脳と成果を持つトップであっても、「強い言葉」「突き詰めるスタイル」が自動的に正当化される時代ではありません。特に、セクハラ・パワハラに対する社会の感度が高まり、社内外からのチェックも厳しくなっている中で、「結果を出しているから」「昔からこういうキャラだから」は理由にならない、というのが時代の流れです。
雇用クリーンプランナー(KCP)の視点──創業社長ハラスメント対応の「ガバナンス」をどう設計するか
この事案が示しているのは、「優秀な経営者であること」と「ハラスメントリスクがないこと」は別問題だ、という現実です。特に創業社長・トップ経営者の場合、周囲が指摘しづらく、コンプライアンス研修も「自分には当てはまらない」と感じてしまいがちです。雇用クリーンプランナー(KCP)の視点からは、次のようなポイントが重要だと考えます。
第一に、「トップだからこそ行動規範のモデルになる」という前提で設計し直すことです。経営層・取締役・創業者に対して、一般社員以上に明確な行動規範を定めること。たとえば、「人格否定につながる言葉遣い」「容姿・身体的特徴をネタにした発言」「性的な話題を冗談として持ち出すこと」はしない、といった基準を明文化し、社内外に共有することが求められます。
第二に、経営トップにも「フィードバック」と「チェック機能」を設けることです。社外取締役や監査役、人事・指名委員会、外部の相談窓口を活用し、トップの言動についても一定のフィードバックが届くルートを用意すること。内部通報制度があっても、「社長のことは言いづらい」という空気があれば機能しません。匿名でも相談できるホットラインや、第三者機関によるサーベイなど、トップにも届く仕組みが必要です。
第三に、「成果」と「カルチャー」をセットで評価することです。売上や利益、事業成長に加えて、離職率、心理的安全性、ハラスメント件数、エンゲージメントスコアなど、企業文化に関わる指標も経営評価に組み込む。そうすることで、「数字を出していれば何を言ってもよい」というメッセージを組織から消していくことができます。
結語:強いメッセージと「人の尊厳」を両立させるために
オイシックスのような成長企業では、「スピード」「熱量」「コミットメント」が重視されやすく、そのこと自体は競争力にもつながります。しかし、その熱さが、社員一人ひとりの尊厳や心理的安全性を損なう方向に振り切れてしまえば、長期的には人材流出やブランド毀損を招きます。
今回の報道と会社側の回答は、「ハラスメント発言があったことは事実であり、本人も反省している」という地点までは来ています。ここから先は、「カリスマ個人の自省」に任せるのではなく、「経営トップも含めた行動規範」と「フィードバックとチェックの仕組み」を組織としてどう整えるかが問われます。雇用クリーンプランナー(KCP)は、「結果を出すからこそ、人を大事にする経営」へと舵を切る企業が増えていくよう、制度設計とカルチャーづくりの両面から伴走していきます。
