2025.12.23
公立藤岡総合病院「職員9人懲戒処分」。医療現場ハラスメントを「個人問題」から「組織の構造」へ|一般社団法人クレア人財育英協会
【出典】公立藤岡総合病院で職員9人を処分 ハラスメント該当行為など(NHK)
医療従事者9人が懲戒処分──セクハラ・パワハラ・患者への不適切発言
群馬県藤岡市の公立藤岡総合病院で、同僚へのセクシャルハラスメント(セクハラ)やパワーハラスメント(パワハラ)、患者への不適切な言動が確認されたとして、病院を運営する医療事務組合は医療従事者9人に対して停職や減給の懲戒処分を行いました。対象となったのは30代から50代の職員で、医師・看護師・技師など現場を担う医療従事者です。
ハラスメントの中心とされたのは40代と50代の4人で、いずれも複数年にわたって同僚に対するセクハラ・パワハラに該当する言動を繰り返していたとされています。これら4人には停職3か月の懲戒処分が科されました。さらに、この4人を監督する立場にあった上司3人についても、管理・監督が適切に行われていなかったとして減給の懲戒処分が行われています。
複数年にわたる不適切言動と「改善されない」現場
医療事務組合によれば、2025年9月に職員からの申し立てがあり、内部調査の結果、4人の医療従事者がハラスメントに該当する行為を行っていたことが確認されました。いずれのケースも「単発」ではなく、複数年にわたって繰り返されていた点が重く見られています。
また、30代と50代の技師2人についても、患者や同僚に対する不適切な言動が複数年にわたり継続していたとされ、減給10分の1・3か月の懲戒処分となりました。問題なのは、この2人が繰り返し指導を受けても改善されなかったことです。「指導して終わり」にしてきた結果、患者・同僚ともに不信と萎縮を生む状態が長く放置されていたことになります。
前回のパワハラ処分から半年──それでも出てきた新たなハラスメント
公立藤岡総合病院では、2025年5月にも看護師がパワハラスメントで停職処分となっています。院内でハラスメント防止の研修や意識向上への取り組みを進めていた矢先に、今回あらたに9人の懲戒処分が出たかたちです。
設楽芳範病院長は「再発防止に向けて職員の意識向上を図るなかで、ハラスメントが認められました。大変遺憾であり、患者や市民にご心配をおかけして申し訳ありません。組織全体でハラスメントの防止や適正な業務遂行を徹底してまいります」とコメントしています。つまり、病院として「ハラスメント対策を進めていたが、それでもなお複数年の行為が掘り起こされた」という構図であり、医療機関におけるハラスメントの根深さを示す事例とも言えます。
「個人の問題」で終わらせない──管理職の監督責任も処分対象に
今回の処分の特徴は、加害行為を行った職員だけでなく、その上司3人も減給処分となった点です。管理・監督が十分に機能していなかった、つまり「見て見ぬふり」あるいは「改善につなげる仕組みを回せていなかった」ことが、懲戒事由として問われました。
医療現場では、業務の多忙さや上下関係の強さから、ハラスメントや不適切な言動が「指導」「文化」「昔からのやり方」として正当化されてしまうことがあります。しかし、今回のように管理職・上司に対しても懲戒処分が行われた事例は、「現場の空気」に任せるのではなく、組織として責任を分担しなければならないことを象徴しています。
雇用クリーンプランナー(KCP)の視点──医療機関ハラスメント対策の“再設計”が必要
公立藤岡総合病院の事案は、「医療現場のハラスメントは個人の資質の問題ではなく、組織の構造と文化の問題でもある」という事実を改めて突きつけています。雇用クリーンプランナー(KCP)の視点からは、次のような点が課題として浮かび上がります。
第一に、「複数年にわたる行為」がなぜ止まらなかったのかという点です。繰り返しの指導があったにもかかわらず改善しなかった技師2人のケースは、「指導の中身」と「評価・配置転換・昇任」の仕組みが噛み合っていなかった可能性を示唆します。ハラスメントや不適切言動を繰り返す人に対し、単なる口頭注意で終わらせるのではなく、評価や人事に反映させるルールを明確にする必要があります。
第二に、「相談のルート」と「初動対応」のあり方です。今回のケースでは職員からの申し立てがきっかけとなりましたが、「その前に誰かに相談していたのではないか」「噂レベルで知っていた人はいなかったか」といった点も含めて検証すべきです。院内相談窓口、外部窓口、産業医、看護部長、人事・総務など、複数の入口を用意し、「聞いた以上は組織として動く」という文化を根づかせることが重要です。
第三に、医療機関ならではの「患者対応」と「チーム医療」の文脈です。患者への不適切な言動は、医療安全や医療倫理の問題とも直結します。医療側のストレスや多忙さは理解できるとしても、患者・家族に対する言葉や態度は、医療不信やクレーム、ひいては訴訟リスクにつながります。チーム医療の中で、お互いの声を上げやすくし、「あの言動はおかしい」と言える関係性をどう作るかが問われています。
結語:医療現場のハラスメントを「見える化」し、構造ごと変えていく
セクハラやパワハラ、不適切言動は、被害を受けた職員と患者の心身を傷つけるだけでなく、病院全体への信頼を大きく損ないます。今回の公立藤岡総合病院の事案は、「再発防止に向けて意識啓発をしている最中」にも新たなハラスメントが見つかったという点で、医療機関における問題の根深さを物語っています。
必要なのは「研修を一度やって終わり」ではなく、通報・調査・処分・人事・評価を一体で考える、構造的なハラスメント対策です。雇用クリーンプランナー(KCP)は、医療機関や自治体がこうした事例を教訓に、現場の声を起点にしたルールづくりと、実務に落ちる運用の両方を整えていけるよう、引き続き支援していきます。
