2026.01.20
神戸大学・元教員をセクハラ認定で「諭旨解雇」処分。大学セクハラは「被害者保護」と「再発防止の実装」が問われる|一般社団法人クレア人財育英協会
神戸大学が元教員を諭旨解雇──元女子学生へのセクハラを認定
神戸大学は2026年1月19日、「教員の懲戒処分について」として公表し、元教員(男性、60代)に対し2026年1月5日付で諭旨解雇の懲戒処分を行ったと発表しました。理由は、元女子学生に対するセクシュアル・ハラスメントと認められる言動があったためで、大学の就業規則に基づき処分したとしています。
本件について神戸大学は「被害者への配慮が必要な事案であるため、詳細の公表は差し控える」とし、具体的な言動や経緯の詳細は公表していません。一方で、人事担当理事(理事・副学長)は、被害者への謝罪とともに「大学教員がこのような行為を行ったことは社会に対する信用を著しく失墜させるもので極めて遺憾」とコメントし、指導徹底と再発防止を表明しています。
「詳細非公表」は被害者保護と説明責任のバランスで成り立つ
大学におけるセクハラ事案では、被害者の特定リスク、二次被害の防止、プライバシー保護の観点から、詳細を公表しない対応が取られることがあります。今回も神戸大学は被害者配慮を理由に詳細を控えています。
ただし、詳細非公表が続くと、学内外の関係者は「どの程度の事案だったのか」「組織としてどこが問題だったのか」「再発防止は具体的に何をするのか」を判断しにくくなります。被害者保護を優先しながらも、大学としては、個別が特定されない範囲で「再発防止の実装内容」を示すことが信頼回復の鍵になります。
大学セクハラの本質──権限差と評価関係が「断れなさ」を生む
大学教員と学生の関係は、成績評価、研究指導、推薦、進路、学内ネットワークなど多くの権限差を伴います。たとえ教員側に「悪意はない」といった弁解があっても、学生側は「断れば不利益になるのでは」という恐れを抱きやすい構造があります。
つまり大学のセクハラ問題は、個人の逸脱であると同時に、権限差がつくる「沈黙」と「我慢」を前提に成立してしまう構造問題です。諭旨解雇という処分は重要ですが、処分だけで構造が変わるわけではありません。
雇用クリーンプランナー(KCP)の視点──「処分」より先に守るべきは被害者の回復と、仕組みの更新
神戸大学の発表は、セクハラを認定し、諭旨解雇という重い処分を行った点で、組織としての意思表示になっています。一方で、再発防止の実効性は「処分の重さ」ではなく、「運用の具体性」で決まります。雇用クリーンプランナー(KCP)の視点から、大学が実装すべきポイントは次の3つです。
第一に、相談の導線を「外部性」とセットで整備することです。学生は学内で相談すると人間関係が壊れることを恐れます。学外の第三者窓口、匿名相談、相談後の不利益取扱いの禁止を明確にし、「相談しても安全」という環境を実装する必要があります。
第二に、教員向け研修を「一般論」ではなく「学生との権限差」を軸に再設計することです。セクハラ研修を受けていても、教員側が「これは恋愛」「これは冗談」と誤認するケースは起きます。評価関係がある相手に対して、どの言動が越境になるのかを、具体例で反復し、研究室文化に落とし込む必要があります。
第三に、再発防止の透明性です。詳細は公表しなくても、例えば「相談窓口の強化」「被害者支援の手順」「指導・処分のプロセス」「再教育の仕組み」「再発防止策の実施状況の定期公表」など、組織として何を変えるのかは説明できます。被害者保護と説明責任は対立ではなく、両立させるべき課題です。
結語:大学の信頼は「厳正処分」だけで戻らない
大学は教育研究機関であると同時に、学生にとって人生の基盤をつくる場所です。教員によるセクハラは、被害者の尊厳を傷つけるだけでなく、大学という制度への信頼を根底から揺るがします。
諭旨解雇という処分は一つの区切りですが、信頼回復は「被害者の回復支援」と「再発防止の実装」がセットになって初めて進みます。一般社団法人クレア人財育英協会は、大学・教育機関が、権限差による沈黙を生まない相談体制と、越境を止める文化・制度を整えられるよう支援していきます。
