2025.12.19
管理職の8割が「マネジメントの限界」を実感──ハラスメント対応・多様性・メンタルケアが生む“構造的な負荷”とは
【出典】管理職の8割が実感するマネジメントの限界とハラスメント対応の真実
管理職の78.3%が「この5年でマネジメントが難しくなった」と回答
「管理職が育たない」「マネジメントができる人材がいない」。
多くの企業で聞かれるこの嘆きは、本当に管理職個人の能力不足だけが原因なのでしょうか。
ビズリーチ WorkTech研究所が、年収1000万円以上の管理職経験者465人を対象に行った調査では、78.3%が「直近5年でマネジメントが難しくなっている」と回答。
マネジメントの難しさが、もはや「個人の資質」ではなく、組織全体で向き合うべき構造的課題であることが浮き彫りになっています。
マネジメントを難しくしているのは「ハラスメント対応」と「多様性」と「メンタル」
マネジメントが難しくなった理由として、複数回答で挙がった上位項目は以下の通りです。
- ハラスメント意識の高まりへの対応:50.8%
- 多様性の増大と価値観の多様化への対応:34.6%
- メンタルヘルス問題への対応:34.3%
かつての管理職の役割は、
- 業務を回す
- 目標を達成させる
ことが中心でした。
しかし現在のマネジメントには、
- 部下一人ひとりの価値観への配慮
- 日々の心理状態の把握
- それぞれに合ったコミュニケーション・関わり方
といった、より高度な対人スキルが求められています。
現代の管理職に求められているのは「業務管理」ではなく「人の成長と動機づけ」
今のマネジメントで特に求められていることとして(複数回答)、
- モチベーション向上のための対応:37.6%
- 部下個人の成長支援:35.5%
- ワーク・ライフ・バランスへの配慮:34.4%
が上位に挙がりました。
つまり、管理職の役割は「タスク管理」から、
- 人を育てる
- 人を動機づける
- 人の生活と健康にも目配りする
といった、人材開発・エンゲージメント・メンタルヘルスまで含んだ総合職へと質的に変化しています。
年上部下という新たなマネジメント課題──「年長者=指導する人」の時代は終わった
マネジメントを難しくしているもう一つの要因が、「年上部下」の存在です。
調査では、
- 83.2%が「年上の部下を持った経験がある」
- そのうち68.0%が「マネジメントに悩んだ」
と回答しています。
具体的な課題としては(複数回答)、
- モチベーション維持の難しさ:40.1%
- 指示やアドバイスの伝えにくさ:34.6%
- キャリアプラン・成長目標設定の難しさ:28.2%
などが挙げられました。
年齢と役職が必ずしも一致しない今、「年長者が教え、年少者が学ぶ」という単純な構図は崩壊しています。
この状況では、管理職に求められるのは「年齢による権威」ではなく「対話力」と「個の理解力」だということが鮮明です。
もはや「優秀なプレイヤーを昇格させれば良い」時代ではない
ハラスメント対応、多様性への配慮、メンタルヘルスケア、個別の成長支援、モチベーション管理……。
管理職が担うべき役割は年々広がり続けています。
この状況で、従来どおり
- プレイヤーとして優秀な人を昇格させる
- 数日間の管理職研修だけで「上司スキル」を身につけてもらう
というやり方では、明らかに役割の重さと準備のバランスが取れていません。
今回の調査が示すのは、「マネジメントの難しさ」は個人の資質の問題ではなく、組織として設計を変えるべき問題だという点です。
雇用クリーンプランナー(KCP)の視点──マネジメントを「個人責任」から「組織設計」の問題へ
本調査は、管理職が直面している現実を、データで可視化したものです。
雇用クリーンプランナー(KCP)の視点からは、次の3つのポイントが浮かび上がります。
① 「ハラスメント対応」を一人の上司に丸投げしない
- ハラスメント・メンタル・労務リスクは、本来人事・法務・産業医・EAPなどと連携すべき組織課題です。
- 管理職には「最初の窓口」としての役割を担ってもらい、判断や対処は組織全体で支える設計に切り替える必要があります。
② プレイヤーとマネージャーのキャリアパスを分けて設計する
- 「昇進=管理職」の一本線ではなく、専門職・プロフェッショナル職としてのキャリアパスを整備し、“マネジメント適性がない人を無理に管理職にしない”選択肢を用意する。
- 逆に、マネジメントを担う人には、評価・権限・時間配分をマネジメント中心に再設計し、「プレイヤー+管理職」の二重負荷を減らすことが重要です。
③ 「対話スキル」と「個の理解」をチーム単位で育てる
- 1~2日の管理職研修だけで「傾聴」「フィードバック」「ハラスメントライン」「メンタルケア」まで扱うのは限界があります。
- 組織として、定期的な1on1、チームリフレクション、ケーススタディなどを仕組みとして埋め込むことで、「対話するマネジメント」を日常化する必要があります。
結語:「いい上司を探す」のではなく、「上司も守られる組織」をつくる
管理職の8割近くが「マネジメントが難しくなった」と感じている今、
「マネジメントできる人材がいない」「最近の管理職は弱い」と嘆くだけでは、組織は前に進めません。
必要なのは、「マネージャー個人の問題」から「マネジメントという仕事の再設計」へと発想を切り替えることです。
KCPは、ハラスメント対応・多様性・メンタルケア・育成を一人に背負わせるのではなく、構造として支える組織づくりを、ともに考えていきます。
