2025.12.25

28%が「カスハラ受けた」仙台市のカスハラ基本方針をどう読むか。「意見は歓迎、理不尽な要求は打ち切る」自治体ハラスメント対応の次の一手|一般社団法人クレア人財育英協会

【出典】カスハラ対策、仙台市が基本方針 28%が「カスハラ受けた」


仙台市が「カスタマーハラスメント対策基本方針」を策定

仙台市は2025年12月15日、市民からの理不尽な要求や暴言など、いわゆるカスタマーハラスメント(カスハラ)から職員を守るための「対策の基本方針」を公表しました。これにより、市窓口や電話、メール、SNSなどでの対応について、市としての判断基準と対応ルールが初めて明文化された形です。

方針では、カスハラと思われる事案には「複数の職員で対応する」ことを原則とし、悪質なケースについては「警察に通報する」ことも明記しました。自治体として「職員を一人で矢面に立たせない」「必要な場面では外部の力も借りる」という姿勢をはっきり示した点が注目されます。


仙台市が定義するカスタマーハラスメントと、その具体例

仙台市の基本方針では、カスタマーハラスメントを次のように定義しています。

要求の内容が妥当でない、または、その要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当なもの。

具体例として示されているのは、次のような行為です。

・行政サービスと関係のない要求や執拗な追及
・長時間の拘束や、同じ趣旨の要望を繰り返し続ける行為
・暴行、暴言、威嚇、脅迫などの攻撃的な言動
・ネット上での誹謗中傷や、事実をねじ曲げた情報の拡散
・差別的な言動、セクハラなどのハラスメント全般

「理不尽なクレーム」という抽象的な言い方ではなく、「何がNGなのか」をできるだけ具体的な言葉で示しているため、職員側も市民側も、線引きのイメージを共有しやすくなっています。


職員の28%が「カスハラを受けた」と回答──暴言と時間拘束が中心

仙台市は、基本方針の策定に先立ち、2025年5月に初めて職員アンケートを実施しました。学校職員やバス・地下鉄の運転士を除く4558人が回答し、そのうち28%にあたる1271人が「カスハラを受けたことがある」と答えています。つまり、ほぼ3人に1人が何らかのカスハラを経験している計算です。

内容として最も多かったのは「暴言」で、それに続いたのが「時間拘束」でした。大声で怒鳴る、人格を否定するような言葉を浴びせる、長時間窓口や電話を占有する、同じ質問を延々と繰り返して業務を妨げる──そうした行為が、自治体職員の就業環境をじわじわと蝕んでいる実態が浮かび上がっています。


仙台市の具体的な対応方針──合理的説明を尽くしても伝わらなければ「打ち切る」

対策として、仙台市は次のような運用を示しました。

まず、同じ趣旨の質問や要求について、職員が制度やルールに基づき「合理的な説明」を繰り返しても理解が得られない場合は、その時点で「対応を打ち切る」ことができるとしました。これにより、「何時間でも付き合わされる」「何度でも同じ説明を強いられる」というエンドレスな時間拘束から、現場を守ることができます。

また、暴行や差別的言動、露骨な威嚇や脅迫など、悪質と判断されるケースでは「警察の力を借りる」とし、必要に応じて通報を行う方針も明記されました。これまで「公務員だから我慢すべき」とされがちだった場面に対して、自治体として「ここから先はNO」と線を引いたことになります。

市行政経営課の担当者は、「市民の意見や要望の多くは行政サービスの向上につながるもので、引き続き真摯に対応する」としつつ、「カスハラは職員を傷つけ、他のサービスを妨げる。組織として毅然とした態度で向き合う」とコメントしています。この「意見は歓迎だが、ハラスメントにはNO」という二段構えのメッセージが、今回の基本方針の核と言えます。


雇用クリーンプランナー(KCP)の視点──自治体カスハラ対策の“標準モデル”として

仙台市のカスハラ基本方針は、これから自治体や公的機関が「公務員へのカスハラ対策」を進めるうえで、ひとつの標準モデルになり得る内容です。雇用クリーンプランナー(KCP)の視点から、特に重要だと感じるポイントは次の三つです。

第一に、「何がカスハラか」をきちんと言語化したことです。「職員がつらいと感じたらカスハラ」ではなく、「行政サービスと関係のない要求」「社会通念上不相当な態様」といった判断軸を示し、暴言・時間拘束・ネット中傷・差別発言・セクハラなど、具体的なイメージを共有しています。これにより、「これは正当な苦情か、それともハラスメントか」を職員と市民が対話しやすくなります。

第二に、「複数対応」「打ち切り」「警察通報」という三段階の対応を方針として示したことです。現場に一任するのではなく、「一人で抱え込まない」「一定のラインを超えたら対応をやめてよい」「さらに悪質なら警察と連携する」というエスカレーションの道筋が見えることで、職員も安心して線を引けるようになります。

第三に、「職員を守る」ことと「市民の声を大事にする」ことを両立させようとしている点です。「カスハラはNO」と言いつつも、「意見・要望にはこれまで以上に真摯に対応する」とあえて書き込んでいるのは、利用者側の萎縮を避けるための重要なメッセージです。自治体カスハラ対策は、「苦情を減らす」ことではなく、「正当な苦情はより聞き、ハラスメント行為だけをきちんと断る」仕組みづくりだと言えます。


結語:市民の声と職員の尊厳を両立させるカスハラ対策へ

仙台市の調査では、職員の28%がカスハラを経験している一方で、多くの市民の意見や要望が行政サービスの改善につながっていることも事実です。だからこそ、「声を上げにくくする」のではなく、「暴言や理不尽な要求だけをきちんとハラスメントとして扱う」視点が重要になります。

今回の基本方針は、公務員に対するカスタマーハラスメントが社会問題化する中で、自治体がどのように線を引き、現場職員を守りながら、市民との対話を続けていくかという問いに対する一つの答えです。雇用クリーンプランナー(KCP)は、自治体・公的機関・企業がこのような方針を起点に、「意見歓迎・暴言NG」の文化を根づかせていくことを支援していきます。

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