2026.01.23

あおぞら銀行「隔離はパワハラ」高裁逆転判決。一人部屋を人事の道具にしないための設計|一般社団法人クレア人財育英協会

【出典】同僚からの隔離は「パワハラ」、あおぞら銀行に840万円支払い命令…東京高裁が逆転判決


東京高裁が逆転判決──「同僚からの隔離は組織として決定したパワハラ」

同僚と隔離された部屋で長期間勤務させられ、精神的苦痛を受けたとして、あおぞら銀行の男性行員が損害賠償などを求めた控訴審で、東京高裁は2026年1月22日、請求を退けた1審・東京地裁判決を変更し、銀行側に計約840万円の支払いを命じる判決を言い渡しました。

佐藤哲治裁判長は、「同僚からの隔離は、組織として決定したパワーハラスメントだ」と指摘しています。パワハラが「個人の暴言」ではなく、「組織的な配置・運用」によって成立することを、司法が明確に言語化した判決と言えます。


事案の骨子──降格後、応接室で3年3か月の単独勤務

判決によると、あおぞら銀行は2021年、管理職だった原告を非管理職に降格させ、応接室で3年3か月にわたり、一人でリポートを作成させるなどの業務を続けさせました。長期間にわたる「同僚からの隔離」と「単独業務」が、原告の就業環境に深刻な影響を与えたとされています。

東京高裁は、隔離を長期間続ける合理的理由がなく、業務内容も本人の能力や経験と関係が薄かったと判断。慰謝料に加え、降格により減少した賃金相当額などの支払いを命じました。銀行側は「判決文が届いていないためコメントを控える」としています。


なぜ「隔離」がパワハラになるのか──キーワードは「合理性」と「相当性」

「別室で仕事をさせること」は、すべてが直ちにパワハラになるわけではありません。たとえば、情報管理上の必要、感染症対策、業務機密の取り扱い、本人の希望による配慮など、合理的な理由があり、業務内容も適正であれば、適法な配置として成立し得ます。

しかし本件で高裁が問題視したのは、隔離が「長期間」に及び、合理的理由が見いだせないこと、そして業務内容が本人の能力や経験と関係が薄く、事実上の“疎外”として機能していた点です。つまり、配置が業務の必要ではなく、本人を社会的に孤立させる手段として使われたと評価されると、パワハラの中核要件に触れてしまうということです。


雇用クリーンプランナー(KCP)の視点──「静かなパワハラ」は可視化しないと止まらない

この判決が示す本質は、「パワハラは怒鳴ることだけではない」という点です。雇用クリーンプランナー(KCP)の視点からは、組織的パワハラの典型として、次の論点が浮かび上がります。

第一に、孤立の長期化は、それ自体が有害だということです。職場における同僚との接点、相談の導線、共同作業は、メンタルの安全装置でもあります。これを意図的に外し続ければ、暴言がなくても心身にダメージが蓄積します。「一人部屋で黙々と仕事」は、場合によっては“罰”として機能し得る。ここが、静かなパワハラの怖さです。

第二に、人事・配置の意思決定こそがハラスメントになり得るということです。今回、高裁は「組織として決定したパワハラ」と明言しました。個人の悪意ではなく、組織の会議や人事判断の結果として、誰かの就業環境が破壊されるケースがある。だからこそ、配置転換や降格、職務付与の合理性を、後から検証できる形で記録しておく必要があります。

第三に、「能力と経験に見合った業務」こそが、職場の尊厳を支えるという点です。仕事の量があるかどうかではなく、本人のキャリアや専門性と無関係な業務を長期に課すことは、「あなたはここにいなくていい」というメッセージになります。職務設計は、単なる業務配分ではなく、尊厳の配分でもあります。


結語:別室配置は「最終手段」、そして必ず説明可能でなければならない

今回の東京高裁判決は、別室配置や単独業務が、適切な理由と運用がない場合、組織的パワハラとして違法になり得ることを明確にしました。「暴言はないから大丈夫」「仕事は与えているから問題ない」という発想は、もはや通用しません。

組織が取るべきは、配置の合理性を説明できる状態を常に持つこと、孤立を長期化させないこと、本人のキャリアに沿った職務設計を行うことです。一般社団法人クレア人財育英協会は、目に見えにくいハラスメントを可視化し、組織の意思決定が人を壊さないようにする制度設計と運用の整備を支援していきます。

お申し込みはこちら