2026.01.06

不登校生支援と教師ハラスメントをどう防ぐか──「学び多様化学校」候補で起きた生徒退学と職員大量退職|一般社団法人クレア人財育英協会

【出典】【証言】「話聞いてほしかった」不登校生受け入れ先で教師がハラスメント 生徒2人退学(KKT / 日テレNEWS)


不登校生の受け入れ先で教師ハラスメント、生徒2人が退学

不登校の子どもたちを受け入れる場で、教師によるハラスメント行為があったとして、生徒2人が退学していたことが報じられました。証言したのは、中学3年の生徒。熊本私学教育支援事業団が運営する「熊本学習支援センター天草下田南校」に通っていましたが、昨年4月に入校したものの半年足らずで退学を選ばざるを得なかったといいます。

生徒はインタビューで「もうちょっとだけ話を聞いてほしかった」と語り、不登校から一歩踏み出して通い始めた先でのショックの大きさをにじませています。保護者も「不登校だから特別扱いしてほしいわけではない。ただ寄り添ってほしかったのに、ブレーキをかけるようなことばかりされた」と訴えています。


「学びの多様化学校」への移行準備中に起きた問題

熊本私学教育支援事業団は、学校に通えない小学生から高校生を対象に、熊本市内2校と天草市内1校でフリースクールや通信制高校を運営しています。天草下田南校は、県内で初の「学びの多様化学校」への移行を目指し、熊本県に認可を申請していましたが、準備不足などを理由に認可が降りず、昨年申請を取り下げていました。

こうした中で発覚したのが、教師によるハラスメントです。天草下田南校に通っていた生徒によれば、担任教師から独特のあだ名をつけられたり、夜遅くまで「反省会」と称して理不尽に怒られたりしたといいます。不登校経験のある生徒にとって、安全基地であるはずの場所が、再び「責められる場」になってしまった構図です。


内部調査でハラスメントを認定、さらに労基署からも是正勧告

天草下田南校では、同じ担任教師の言動を理由に、昨年、生徒2人が相次いで退学しました。内部の調査委員会は昨年12月、教師の言動および法人側の対応を検証し、「生徒に対するハラスメントがあった」と認定しました。

問題は生徒への対応だけではありません。熊本労働基準監督署は、職員に対する残業代の未払い、有給休暇を与えていないなどの労働基準法違反を認め、昨年11月、事業団に対して是正勧告を出しています。現場の職員は「適応障害やうつ病を発症した同僚もいる。明らかに環境が悪いのに改善されない」と証言しています。

こうした労働環境や法人の対応のまずさもあって、熊本市内の拠点で働く職員8人のうち7人が退職を決めたとされています。子どもを支える側であるはずの教職員自身が、心と体をすり減らし、職場を去っていく状況です。


事業団代表は「反省」とコメントするも、構造的な課題は残されたまま

取材に対し、熊本私学教育支援事業団の代表は「うまくいっていなかった部分は反省しなければいけない。課題を整理して引き続き子どもの支援をしていきたい」とコメントしました。しかし、生徒2人の退学、ハラスメント認定、職員7人の退職、労基署の是正勧告という一連の事態は、単なる「うまくいかなかった部分」では済まない重さを持っています。

不登校生や行き場を失った子どもたちを支えるフリースクールや「学びの多様化学校」は、本来であれば安全と信頼の最後の拠点であるべき場所です。その場でハラスメントや過重労働が起きれば、子どもと職員の双方にとって二重の傷となります。


雇用クリーンプランナー(KCP)の視点──「支援の場」こそ、ハラスメント予防の設計が必要

この事案は、不登校支援やオルタナティブ教育の現場が、支援の名のもとにハラスメントやブラック労働を温存してしまうリスクを示しています。雇用クリーンプランナー(KCP)の視点からは、少なくとも三つのレベルでの見直しが必要です。

第一に、子どもにとっての「安全の基準」を明文化することです。あだ名づけ、夜遅くまでの反省会、理不尽な叱責などは、不登校を経験した子どもにとって再トラウマ化のリスクを伴います。「どこからが指導ではなくハラスメントなのか」「どの行為は決して許容しないのか」を、教師だけでなく生徒・保護者とも共有し、相談窓口や第三者委員会を設ける必要があります。

第二に、支援者である職員の労働環境とメンタルヘルスを守る仕組みです。残業代未払いや有給休暇の未付与があれば、支援者自身が疲弊し、結果として関わりが荒くなるのはある意味「必然」です。労働基準法の遵守はもちろん、スーパービジョンやカウンセリングなど、支援者を支える支援の仕組みが不可欠です。

第三に、「学びの多様化学校」など認可を伴う制度とガバナンスの関係です。多様な学びを支える学校であるほど、子どもの権利保護やハラスメント防止、職員の労働環境に関する基準を厳格にしなければなりません。認可の条件として、第三者を交えた苦情処理機構、内部通報制度、定期的な外部評価をセットで求めることも検討すべきでしょう。


結語:不登校支援の現場を「新しい学校」にするために

「話を聞いてほしかった」という生徒の言葉は、不登校支援の本質そのものを突いています。子どもが一度壊れた「学校への信頼」を取り戻そうとしているとき、その先にあるのが、また別のハラスメントや劣悪な労働環境だったとしたら、その代償はあまりに大きいものになります。

不登校や多様な学びを支える場は、「優しさ」だけで成り立つわけではありません。制度・労務・ガバナンスの三つをきちんと設計し、子どもと支援者の双方にとって安全な場を築いてこそ、本当の意味での「学びの多様化」が実現します。雇用クリーンプランナー(KCP)は、教育機関や支援団体が、熱意だけに頼らないハラスメント予防と労働環境の整備を進めていけるよう、今後も伴走していきます。

 

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