2026.01.11
図書施設の暴言逮捕──「侮辱罪」とカスハラ対策で司書を守る線引きを社会に実装する|一般社団法人クレア人財育英協会
【出典】図書施設でカスハラか 「このアホ」侮辱容疑で男を逮捕、司書は退職
図書室で司書に暴言、侮辱容疑で61歳男を逮捕
福岡県警は、図書施設の司書に対して大声で暴言を吐いたとして、福岡市東区の無職の男(61)を侮辱容疑で逮捕したと発表しました。逮捕は2026年1月8日で、男は「何も話すことはありません」と供述していると報じられています。
逮捕容疑は、2025年9月10日、福岡市南区の市男女共同参画推進センター・アミカス2階の図書室で、司書の女性(51)に対し「このアホ。バカ野郎」などの暴言を、他の利用客がいる前で浴びせ、侮辱した疑いです。女性は事件後に司書を辞めたとされています。
発端は「順番待ち」への不満か──暴言の場が“公然”だったことの重さ
報道によると、女性がカウンターで男の対応をしていた際、男がトイレに行っている間に、女性が他の利用客の対応をしたことに不満を持ち、男が大声を出したと警察はみています。図書室という公共空間で、第三者がいる前で暴言が放たれた点が重要です。
侮辱罪は「公然と人を侮辱、軽蔑した場合」に問われる罪です。今回のケースは、他の利用客がいる場での暴言であり、司書個人への攻撃であると同時に、利用者全体の安心・安全を損なう行為でもありました。
証拠は録音と防犯カメラ──「記録」が司書を守る武器になる
事件の立件にあたっては、現場を目撃した警備員が騒ぎを録音していたこと、防犯カメラ映像、そして司書への聞き取りなどが手がかりになったとされています。さらに、男が事件後も決まった曜日に図書室を訪れていたことから、捜査員が待ち構えて身柄を確保したという経緯も報じられました。
この一連の流れは、カスハラ対策における「記録」の重要性を示しています。暴言や威嚇は、その場で終わってしまうと立証が難しくなり、結果として被害者が泣き寝入りしやすい。録音・防犯カメラ・警備体制など、事実を残す仕組みが、現場で働く人を守る最後の支えになります。
侮辱罪は厳罰化、カスハラ対策は義務化へ──社会の線引きが動いている
侮辱罪は、かつて法定刑が拘留(30日未満)または科料(1万円未満)に限られていました。しかし、2020年の中傷問題が社会課題化したことを背景に、2022年に厳罰化され、現在は1年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金などが科され得る枠組みになっています。
また、顧客による理不尽な要求や暴言といったカスタマーハラスメント(カスハラ)も社会問題となり、2025年6月には、企業にカスハラ対策を義務付ける改正労働施策総合推進法が成立しました。施行は2026年中と見込まれています。
つまり、「言ってはいけないライン」を法制度としても明確化しようとする動きが進んでいる中で、今回の逮捕は「公共サービスの現場を守る」という方向性とも一致します。
雇用クリーンプランナー(KCP)の視点──図書館・窓口のカスハラ対策は「断る」「記録する」「支える」がセット
図書館や公共施設は「誰でも利用できる」場であるがゆえに、職員側が強く出にくく、カスハラが温存されやすい構造があります。今回の事件では、司書が退職に追い込まれたという結果が残りました。雇用クリーンプランナー(KCP)の視点では、再発防止に向けて次の3点が欠かせません。
第一に、対応の線引きを明文化し、必要なら「対応を打ち切る」ことです。正当な要望は丁寧に受け止める一方で、暴言や威嚇が出た段階で「その話し方では対応できない」と明確に伝え、継続する場合は対応を終了する。これは職員を守るだけでなく、他の利用者の利用環境を守る措置でもあります。
第二に、録音・録画を含む「記録」を標準装備にすることです。今回、警備員の録音と防犯カメラが立件の要になったように、事実が残っていれば、警察相談や法的対応が現実になります。公共施設のカスハラ対策は、心理論よりも先に、記録と運用の仕組みが効きます。
第三に、現場を一人にしないことです。図書室のカウンター業務は、構造的に孤立しやすい。複数対応、警備員との連携、管理者の即時同席、相談窓口の整備など、「守る側が守られている」状態をつくることが、離職を防ぎます。
結語:公共の場での暴言を「個人の不運」にしない
図書館・男女共同参画施設・役所窓口などは、地域のインフラです。そこで働く司書や職員が、暴言や威嚇によって退職に追い込まれるなら、失われるのは一人の雇用だけではありません。公共サービスの質そのものが低下し、利用者全体が損をします。
今回の逮捕は、暴言を「仕方ない」で済ませない社会への転換点になり得ます。一般社団法人クレア人財育英協会は、公共施設のカスハラ対策を、理念ではなく「断る・記録する・支える」という運用として実装し、働く人が安心して公共サービスを提供できる環境づくりを支援していきます。
