2025.12.28
松阪市のパワハラ・不正申告・公物横領問題で職員を懲戒処分に|一般社団法人クレア人財育英協会
【出典】パワハラや不正申告、公物横領 三重・松阪市 職員4人を懲戒処分(よもやまニュース)
松阪市で職員4人を懲戒処分──ハラスメント、不正申告、公物横領
三重県松阪市は2025年12月26日、健康福祉部と松阪市民病院で発生した不祥事を受け、合わせて4人の職員を懲戒処分にしたと公表しました。処分内容は停職、減給、戒告などで、対象となった行為は昨年4月から今年8月まで、1年以上にわたって行われていたものです。
市職員課は「関係者への聞き取りなどに時間を要し、このタイミングでの処分となった」と説明していますが、ハラスメントや不正が長期にわたって是正されてこなかった構造も見て取れます。
健康福祉部でのハラスメント事案──女性係長が20代男性部下にパワハラ・セクハラ
健康福祉部では、係長級の女性職員(43)が、部下である20代男性職員に対して複数のハラスメント行為を行っていたとして、停職1か月の懲戒処分となりました。また、その場に同席しながら止めずに傍観していた課長補佐級の女性上司(50)も、減給10分の1・1か月の処分を受けています。
行為が明らかになったのは、男性職員が同僚に相談し、市職員課が把握したことがきっかけでした。その後の聞き取り調査で、係長級女性が2024年4月から2025年3月にかけて、上司の立場を利用して職務の適正な範囲を超えた言動を繰り返し、部下に精神的苦痛を与えていたことが確認されました。
具体的には、部下の男性職員がいる部屋への入室を妨げるようにドアを施錠したり、恋人の有無を問いただすなどの行為があったとされています。松阪市職員課は、これらをパワーハラスメントおよびセクシュアルハラスメントに該当すると判断しました。
男性職員は精神的苦痛から精神疾患を発症し、2025年4〜5月に病気休暇を取得。復帰後は加害者とは別の部署へ配置換えとなりました。係長級女性は聞き取りに対し、「軽い気持ちでやっていた。悪いことという意識は持っていなかった」と説明したと報じられています。
市職員課は、この係長級女性が他の職員にも同様の行為を行っていたことも確認しましたが、当事者から被害としての申し出がなかったため、今回の処分対象には含めなかったとしています。この点は、「被害申告がないと動きづらい」現場の限界と、「申告しづらい空気」が同時に存在していることを示しています。
松阪市民病院での公物横領と不正申告──おにぎりと時間外手当7125円
松阪市民病院では、医療技術部の係員2人が懲戒処分となりました。いずれの事案も院内の公益通報窓口への情報提供をきっかけに発覚し、市職員課が調査を進めてきたものです。
一件目は、医療技術部係員の男性(42)が給食用食材を私的に使用した件です。2025年2月20日、本来は廃棄すべき米飯と、患者に提供する予定だった海苔の佃煮を使っておにぎりを作り、その場で食べたとされています。市は、「米飯は適切に廃棄しなかったこと」が問題であり、海苔の佃煮を私的に使用した行為は地方公務員法上の「公物の横領」に当たると判断しました。本人は「家に帰ってから夕食を作るのがおっくうだった」と説明したということです。
二件目は、同じ医療技術部の係員男性(40)が出退勤時間を改ざんし、本来の勤務実績にない時間外手当7125円を不正に受給した件です。市は、勤務時間の不正申告による時間外手当の不正受給と認定し、減給10分の1・1か月の懲戒処分としたうえで、不正に受給した手当について返還を求めています。
これらの行為はいずれも地方公務員法に定める職務上の義務違反にあたり、病院という公共性の高い現場におけるコンプライアンス上の問題として捉えられています。
松阪市長の謝罪と組織の信頼回復
竹上真人市長は、「市民の皆さまの信頼を損なう結果となったことを深くおわび申し上げます」とコメントを発表しました。健康福祉部でのパワハラ・セクハラ、不正な勤務時間申告、公物横領という複数の不祥事が同時期に表面化したことで、市全体としての信頼性が問われる事態となっています。
同時に、公益通報窓口や市職員課への相談を通じて、内部の違反行為が可視化され始めていることも事実です。問題は、「見つかったから処分する」で終わらせず、「同じ構造を再生産しない」仕組みをどう作るかに移っていきます。
雇用クリーンプランナー(KCP)の視点──「軽い気持ち」「少額だから」の甘さをどう断ち切るか
今回の松阪市の一連の不祥事には、「軽い気持ちで」「大したことではないと思っていた」という加害側の認識が共通して見えます。雇用クリーンプランナー(KCP)の視点からは、次の3つの点が課題として浮かび上がります。
第一に、「軽い気持ち」が一番危険だという認識の共有です。恋人の有無を繰り返し聞く、部屋に入れないようにドアを施錠する、職場の食材で小さなおにぎりを作る、数千円の時間外手当を水増しする──いずれも当事者にとっては「ちょっとしたこと」かもしれませんが、被害者や市民から見れば、公務員としての信頼を損なう行為です。「軽い気持ち」と「ハラスメント」「横領」の境界を、具体的な事例で繰り返し伝える必要があります。
第二に、相談窓口と通報制度が機能し始めているからこそ、その先の「対応の質」が問われることです。今回、健康福祉部のハラスメントは部下からの相談経由、市民病院の不正は院内の公益通報窓口が端緒になっています。これは大きな前進ですが、通報を受けたあとに調査・処分・再発防止までつなげられるかどうかで、職員の信頼感は変わります。「通報したのに何も変わらない」「処分まで一年以上かかる」といった状態が続けば、次の通報はしづらくなります。
第三に、「被害申し出がなかったから処分対象外」という運用の限界です。係長級女性が他の職員にも同様の行為をしていたことが確認されながら、「被害としての申し出がなかったので処分対象外」とされた点は、組織文化の課題を示しています。申告が出てこないのは「問題がない」からではなく、「言っても無駄」「波風を立てたくない」という学習の結果かもしれません。アンケート調査や外部専門家によるヒアリングなど、被害申し出に頼りきらない実態把握も検討すべきです。
結語:公務員不祥事を「個人の不始末」で終わらせず、構造の見直しへ
パワハラ・セクハラ、不正申告、公物横領──どれも地方公務員法に反する行為であり、市民の信頼を損なう不祥事です。しかし同時に、これらは「一部職員のモラルの問題」と切り捨てれば済む話ではありません。
松阪市の事案は、内部通報や相談をきっかけに、長年の行為がようやく可視化された一例でもあります。ここから求められるのは、個々の処分にとどまらず、採用・配置・評価・研修・相談体制・公益通報制度を含めて、「なぜ止まらなかったのか」「なぜ言えなかったのか」を組織として振り返ることです。雇用クリーンプランナー(KCP)は、自治体や公的機関がこうした不祥事を教訓に、職員一人ひとりと市民の双方から信頼される運営へと変えていけるよう、制度設計と現場運用の両面から支援していきます。
