2026.01.09

陸上自衛隊員自殺判決「いじめ不認定」でも安全配慮義務が問われる理由|一般社団法人クレア人財育英協会

【出典】カスハラ対策26年10月に義務 関連法施行、全ての企業や自治体(共同通信/news.jp)


札幌地裁判決の骨子──「いじめは認めず」でも「安全配慮義務違反」は認めた

陸上自衛隊員の男性の自殺をめぐる訴訟で、札幌地裁は、先輩によるいじめ行為は認められなかったとしました。一方で、男性には発達障害の疑いや不眠症状があったにもかかわらず、陸自側が配慮の必要性などを先輩に伝えなかった点について、安全配慮義務違反を認めました。

この判決は、加害行為の有無だけではなく、組織が本人の特性や健康状態に応じた環境調整を行えたかどうかが、責任判断の焦点になり得ることを示しています。


ポイントは「いじめか否か」ではなく「配慮情報の伝達と支援設計」

いじめが認められなかったという結論は、直感的には「組織側の責任は小さい」と受け取られがちです。しかし本件では、むしろそこから先の設計が問われました。発達障害の疑いや不眠といったサインがある場合、本人の努力だけで乗り切らせるのではなく、周囲の関わり方や業務の進め方を調整する必要がある、という発想です。

重要なのは、配慮が必要な事情を「本人が抱え込む」状態を放置しないことです。先輩や現場が適切に関わるには、必要な情報が必要な範囲で共有され、支援の手順が整っていることが前提になります。


雇用クリーンプランナー(KCP)の視点──「不認定」から始まる責任のデザイン

この判決が示唆するのは、「いじめが認定されなかった」ことが、組織の免責を意味しないという点です。むしろ、個別の加害行為として立証しにくい局面ほど、組織側の安全配慮義務が前に出てくることがあります。

雇用クリーンプランナー(KCP)の視点では、再発防止の焦点は次の3点に整理できます。

第一に、健康・特性に関するサインが出たときの初動です。疑いの段階でも、不眠などの症状があるなら、勤務・指導・コミュニケーションの設計を早期に見直す必要があります。

第二に、配慮情報の伝え方です。何でも開示すればよいのではありません。本人の尊厳とプライバシーを守りつつ、現場が必要な配慮を実装できる範囲で、上司や先輩に「関わり方の指針」を渡せるかが鍵になります。

第三に、支援を個人の善意に任せないことです。支援の担い手が固定化すると燃え尽きます。相談・調整・フォローの役割をチームで持ち、属人化を防ぐ仕組みが必要です。


結語:「責任」は加害の有無だけで決まらない

いじめの認定がつかない場面は、現実には多くあります。だからこそ、組織がどこまで安全配慮を設計し、現場に実装していたかが問われます。今回の札幌地裁の判断は、「いじめかどうか」だけに議論を閉じないための一つの道筋を示したと言えます。

一般社団法人クレア人財育英協会は、ハラスメント対応を「個人の資質」ではなく「組織の設計問題」として捉え直し、現場が迷わず動けるルールと支援体制の構築を後押ししていきます。

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